BPF-S1000(2.2/5.3μmピクセルカメラ)で微小スポットを測定したみた件

 これまで様々なビーム形状、ビーム径をカメラと比較測定したデータはありましたが、BPFで限界として、どのくらい小さなビームまで、どのくらいの精度で見えるかのという評価はしておりませんでした。最近、お客様より、シングルモードファイバーレーザを光源に使い、Φ30μm以下のビームを測定したいという要求が多く寄せられております。これまではBPF-S1000搭載のカメラのピクセルサイズが5.3μmなので、測定可能な最小ビーム径は10倍のΦ53μmとなり、(正確な)測定は難しいですとお答えしておりました。しかし実際にはΦ53μm以下のビームも表示しますし、ガウスフィットすればΦ30μm以下も表示できる場合がありますので、これらの疑問を解消するために今回、実験系を組んで正確に評価してみました。

(1)実験光学系
 これまでカメラ式との比較を行いましたが、カメラ式の場合、NDフィルタを複数枚入れないとカメラが飽和して測れません。しかしNDフィルタ入れると発熱して熱レンズでビームが絞れるという恐れがありました。今回はもっと正確なビーム径と比較したい。そこでM2=1の基本ガウシアンビームを使います。これならビームウェスト含め、任意の位置でのビーム径が理論計算で出せます。光源にはコア径Φ6μmのSMFから出たLDレーザ光(1060nm)を使い、自由空間中で集光させて、そのウェスト(Z=0)前後のビーム径を計測します。レンズには回折限界の高精度な非球面レンズを用いています。平凸レンズでは収差の影響で理論計算から外れてしまうからです。また、アライメントにも十分注意します。各レンズの中心(光軸)をあわせ、その延長上に出射点(コア)があること、さらにコアからの出射方向も光軸に沿うように調整します。アライメントがずれていると、ビームが楕円になったり、広がり角がビームウェスト前後で変わったり(非対称)します。
 測定にはBPF-S1000を用いますが、図に書かれているシールドウィンドウは付けず、蛍光板で直接測定します。また今回通常の5.3μmピクセルのCMOSカメラに加え、特別に2.2μmピクセルのCMOSカメラも搭載して分解能が上がるか比較してみました。計測ソフトにはLasCa4.1.4を用いています。レーザ出力は20mW CW。もちろんNDフィルタなどは入れる必要ありません。

Experimental Optical Layout

測定結果を以下に示します。レッド(点)が、BPF-S1000(2.2μmピクセルカメラ)、ブルー(点)が通常のBPF-S1000(5.3μmピクセルカメラ)のビーム径測定値、そしてグレー(点)が理論計算されたガウシアンビームのビーム径計算値です。測定値は1Dガウスフィットで求めました。まったく予想外の結果となりました。BPFで測定されたビーム径は、理論値から一定量オフセットしたような形になっています。何%大きいとかそういうわけではありません。

なお、このガウシアンビームの計算ですが、パラメータとしてSMFのコア径6μmから導いておりません。と言うのは、SMFのモードフィールド径が不明ですし、上の実験光学系でコリメート用のf=50mmのレンズの焦点に、コアの出射口を正確に合わせることが難しく、その結果として、右側のビームウェストに倍率が生じるからです。ではどうやって求めたかというと、BPFで測定された広がり角が、図のように直線性が高く、ビームウェスト前後でほぼ同じ傾きであったこと、さらにカメラのピクセルサイズが変わってもほぼ同じであったため、この広がり角を真値として、M2=1(実際には1.02)から求めています。その計算よりビームウェストの直径は7.4μmと推測されました。コア径と比較して近い値です。正直言うとこのようなオフセットがあるとは当初思わず、測定値と計算値はほぼ一致するだろうと考えて計算しました。結果を見たときには、こんなにきれいにオフセットしているなんて、きっとガウシアンビームの計算式が間違っている(何か定数項が抜けてる)と思い、何度も式を確認しましたが問題ありませんでした。この計算値の妥当性については、後で実験でも示されます。

BPFの測定結果を詳しく見ていくと、2.2μmピクセルカメラ搭載の方が、全体に5.3μmピクセルよりも数μm小さな値を示しています。特にビームウェスト近傍では、5.3μmピクセルの方は25μm以下ではピクセルが少なく、ガウスフィットできない状態となりました。これに対し2.2μmピクセルの方は、ビームウェストでも20μm前後の表示なので、問題なく測定できました。ビームウェスト時の測定画面を示します。フィッティングは良好で、裾の広がりもそれほどありません。

さて、こうなるとガウスフィットの計算の信憑性が疑われます。そこで同じ系を、今度はカメラ式のプロファイラで測定を行いました。使用したのは市販の海外製のカメラ式プロファイラとソフトです。(当社のカメラ式BPC-130+LasCaでも良かったのですが、数値(ソフト)の信頼性、ソフト依存性を考慮しました)おなじ5.3μmピクセルと2.2μmピクセルのカメラを用意しました。測定は同じく1Dガウスフィットした値を採用しています。ところが実際にやってみるとカメラ故に大変なことがありました。ビームウェスト近傍ではNDフィルタを入れても入れても信号が飽和するのです。手持ちのフィルタ4枚を全部入れてもまだ飽和するので、今度はLD出力を下げました。ほとんどLDの発振しきい値あたりまで下げて、やっと測定できるようになりました。上の実験系にNDフィルタ(カメラにもND4が内蔵されています)を入れるのですが、スペース的に一カ所に全部は入らないので、分散しました。しかし、どこに入れても収差の悪化は避けられません。

(これは余談ですが、昔、学会で大学の学生さんの発表で、M2を測定するのでレンズでビームを絞り、カメラを動かしながらそのビーム径の変化を測定するのですが、「途中でビームが飽和したのでNDフィルタを追加しました」って、途中でそれやったら、そこに入れたら系が変わるでしょう、案の定M2のカーブに段が出来てるしって思いましたが、指摘するのは大人げないので我慢しました。会場に先生もいるし。)

カメラの測定結果を以下に示します。レッド(点)が、2.2μmピクセルカメラ、ブルー(点)が5.3μmピクセルカメラで測定されたビーム径、そしてグレー(点)が、上記と同じ理論計算されたガウシアンビームのビーム径計算値です。一目して測定値と計算結果が良く一致していることが分かります。やっぱカメラの方が正確だわ、という感じです。(ため息)

詳細に見てみると、カメラ式の場合、2.2μmピクセルでも5.3μmピクセルでも、測定値にあまり差がありません。しかし5.3μmピクセルでは、ビームウェスト近傍のΦ30μm以下ではガウスフィットがエラーになり、測定できなくなりました。さらに2.2μmピクセルカメラにおいても、ウェストのΦ12μm以下ではエラーが出て測定できなくなりました。一方BPF(2.2μmピクセルカメラ)の場合、先ほども述べたようにオフセットのおかげでビームウェストにおいてもエラーが出ることなく測定が出来ました。

では測定可能な範囲ではカメラ式を真値と言いたいところですが、カメラ式に必須であるNDフィルタによる収差や熱の影響は無視できません。上記のガウシアンビームにおいても、ビーム径300μm(Z=1.5mm)当たりでは、カメラ式とFIT式BPF両者のビーム径はかなり近い値になっています。

オフセットについてもう少しデータを整理します。下の図はBPF(2.2μmピクセルカメラ)のZに対するオフセット量を計算した結果で、図の通り位置Z(ビーム径と言ってもよい)に寄らず、ほぼ一様であることがわかります。オフセット量はばらつきはありますが、12~18μmです。

下の図は2.2μmピクセルのカメラ式プロファイラの測定値と計算値との差です。BPFに比べるとやはり小さいのですが、ビームウェストから離れるにつれ、おそらくNDフィルタ挿入による光学系の収差の増大などにより、計算値とのずれが大きくなっています。(広がり角の直線性がカメラ式の方が悪い)またビームウェスト近傍ではビーム径が計算できないため、やはりばらつきが大きくなっています。

そこで半ば開き直りですが、BPFの場合、計算値からの大きなオフセットがあるものの、これがビーム径によらずほぼ一定であるということで、測定値(2.2μmピクセル)から14μmを差し引いてみました。

全域で計算値の±3μmに収まりました。(やったね!)

今回実験で明らかになったBPF(FIT式)における測定値のオフセットの原因については不明ですが、搭載したカメラのピクセルサイズが原因ではなく、蛍光板の有限な厚みによる影響とか、レーザと蛍光の波長の違いとか、CMOSへの入射角がダイナミックに変化するレーザ光直接測定と系が固定されたインコヒーレント光結像測定との本質的な違いとかが可能性として考えられます。しかし一定値のオフセットがきれいにデータに表れているので、今後原因が特定され、対策も検討できるのではないかと考えております。

なお、S-400等の他の機種については、基本ガウシアンビームによる精密な測定はまだ行っておりませんが、S400では約Φ9μmのマルチモードビームが、Φ22μmと計測されており、S1000と同じ13~14μmのオフセットが存在する可能性があります。また3倍の拡大光学系を搭載したS400X3では、同じΦ9μmのマルチモードビームがΦ15μmと測定されておりますので、14μmのオフセットが光学系で1/3のになったと考えると、結構近い値になります。ただ、基本ガウシアンビームでない場合は、真値が分からないので、正確なオフセットの算出は難しいです。