CMOSセンサのカバーガラスを剥がしてみた件

カメラ式のビームプロファイラでは、CCDあるいはCMOSセンサ上の防塵用のカバーガラス(リッド)を剥がしている製品が多いです。これはカバーガラスによるUV光(320-400nm)の吸収とレーザプロファイルへの干渉縞の発生を無くすためですが、CCDあるいはCMOSセンサのメーカが、カバーガラスを取って(付けずに)販売することはないと聞いています。これはカバーガラスが無いと、工場のクリーンルームから出た途端、すぐにセンサ表面に塵が付いて不良品になってしまうからではないでしょうか。したがって市販のカメラ式ビームプロファイラのセンサのカバーガラスは、メーカ以外の業者が後から剥がしたものです。剥がすと改造になるためセンサ(ボード)メーカの保証は受けられません。そこでカメラの保証は、最終的にプロファイラメーカ自身が負うことになります。市販のCMOSセンサ(ボード)は、購入時スマホと同じようにカバーガラスの上に透明なフィルムが付いており、使用時に剥がすようになっています。剥がした瞬間から塵との戦いになりますが、たとえ塵が付いてもガラス面を上手く拭けば、私でも簡単に取ることができます。

センサのカバーガラス剥がしというのは、ビームプロファイラカメラ用以外にも様々な用途で要求がありますが、なかなかニッチな仕事で、センサの種類、メーカの違いにより、加熱して剥離したり機械的に除去したりノウハウが必要だそうですが、業界では海外の大手の業者が事業を辞めたとか、日本でも出来る業者があるとかいろいろ噂を聞きます。また成功率が低く(成功率99%という業者もあります)、そのため1台当たり5~10万円以上の加工費がかかるとか言われています(噂です)。そこで自社内でカバーガラスを剥離できれば、カメラ式プロファイラBPCの性能向上(波長帯の拡大、干渉縞の低減)にもなりますし、コストダウンにもなるので、今回チャレンジしてみました。カバーガラスは四辺を接着剤でパッケージと接着されているので、接着剤の融点よりも高い温度にして剥がすのが発塵が少なく理想的ですが、そのための加熱装置が無く、温度も分からず、また温度を上げてボードのハンダが溶けたりすると駄目になるので、ここは室温でできる手法として、機械的にカバーガラスを切断することにしました。

切断にはハンディルータに金属用の切断砥石を装着して使用しました。防塵のためカメラボード上部をポリエチレンフィルムで覆い、センサ部だけを露出させて周囲の隙間を養生テープで塞ぎます。センサの上面から接着剤が付いたパッケージ内側の境界を狙い、歯を入れていきます。しかしカバーガラスは1mm程度の厚みがありなかなか切断できません。かなりの粉塵が出ますが、粉塵は掃除機で吸いながらできるだけセンサ中に入らないように気を配ります。四辺から慎重に削り進めていきますが、角の所でガラスが突然割れて大きな塊が中に入ってしまいました。

多少ガラス片と粉塵が中に入りましたが、最終的にカバーガラスを剥がすことに成功しました。後は中に入ったガラス片や粉塵の除去がうまくできれば成功です。大きなガラス片はピンセットで、後は除電ブローで細かい粉塵を吹き飛ばしますが、四方にワイヤーボンドがあるので、それらを切らないように細心の注意を払います。しかしそれでも細かい粉塵がかなり残って取れません。そこで次は粘着テープです。手元にあったカプトンテープを細く切り、注意深く接着面で粉塵を粘着して取ります。しかしマイクロレンズの間に入り込んだ細かい粉塵までは取れません。最後は綿棒にIPAを染みこませて軽く拭き取ってみました。

ここまで塵を除去しました。ぱっと見は綺麗ですが、よく見ると小さな線状の傷がかなり入ってしまっています。かなり弱い力で拭いたつもりですが。顕微鏡で見ると線状の傷の周りではマイクロレンズが取れて無くなっていました。センサの表面は非常に柔らかく、粉塵の拭き取り除去は無理なようです。

これは今回カバーガラスを剥がしたCMOSセンサで取得した2Dイメージです。線状の傷の部分は信号が小さく、イメージでも線状に見えます。また肉眼では見えないのですが、少し斜めから光を当てると、大きな粉塵がまだかなり残っていることが分かります。プロファイラとしては塵によるスパイク状の信号落ちが多く、精度が落ちるので商品になりません。(写真の大きな楕円と十字、黒い丸はOpenCVで描画したものです)

機械的だと粉塵の除去が大きな課題となりました。粉塵はなしで剥がしたい。そうするとやはり加熱して接着剤を剥がす方法がよいと思います。またレーザでカバーガラスを割断する手もありますが、多少の粉塵発生は避けられないことと、透過したレーザ光でセンサにダメージが出ないかが心配です。さて、カバーガラスの自力除去については今回失敗に終わりましたが、専門の業者に依頼すれば下の写真のように綺麗に除去できますので、必要なお客様はお問い合わせください。

FIT式の場合、蛍光にUV光は無く、カバーガラスによる干渉縞も出ないので除去の必要性はありません。カメラ式の場合、カバーガラスを取ってもNDフィルタは必要なので干渉縞の発生を完全に抑えることは出来ません。なお、カメラ筐体組み立て時や受光面上にNDフィルタを取り付ける際に発生した塵が、CMOSセンサ上に付くことを完全に避けることは難しく、またカバーガラスが無いと付着した塵を後から取ることも難しいので、どこのメーカ製でもカメラ式プロファイラをよく見ると、どこかしらに塵が付いていることが多いです。